![都市環境デザイン演習Ⅱ 3年生(2022年度)の画像](https://www.edd.osaka-sandai.ac.jp/wp-content/uploads/post_content_img_thumb/13703_1.jpg)
![都市環境デザインコース](/wp-content/images/category/urban-environment-design.gif)
美しい景観、安全で住みよい街。そこに暮らすことで心が豊かになるような、ずっと暮らし続けたいと思えるような環境を実現するためのデザイン。
このコースでは、それぞれの風土にふさわしい都市デザイン、魅力あるまちづくり、より快適な生活のためのシビックデザイン(公共空間・インフラデザイン)、デジタルメディア情報システムに関する専門知識を学びます。
※教職課程の所定科目単位の習得が必要です。
建築・環境デザイン学科 榊原 和彦 教授
「創世記」に、初めに神は天と地を創造し、7日目までに天と地の万象と人をつくったとある。そして、アダムとイブの子カインが、町を建てたという。これを受ければ、「神が自然と人をつくり、人が都市をつくった」ということになろう。諸人は異なる言い方をしている[1][2][3]のだが、都市が人間の創造物であることを言っていることに変わりはない。
そして、『都市は生き物ではないが、それを創造した人間の特徴をいたるところに備えている』とシビル・モホリ=ナギ[4]は言う(写真1参照)。都市は、人と共にあり、人によってつくられ、育てられる。そういう都市づくりの一環の中に、都市環境デザインは位置づけられる。
(写真1)
日本とイタリアの歴史的町並み。それぞれの町並みの中に、それを創造した人間の特徴−言い換えれば「文化」−が如実に反映されている。
((a)メルカテルロ・スル・メタウロ
(イタリア、マルケ州の人口1500人ほどの小都市)
(b)伏見(京都市)の酒蔵のある町並
都市環境デザインは、都市の環境デザインであり、同時に、都市環境のデザインである。前者から考えてみよう。
都市は、人が集まり、空間とか、文化とか、人間活動において特有の都市的特性を有する地域のことである。これを対象とするデザイン分野には、「都市デザイン(アーバンデザイン)」がある。実態としての都市デザインは、都市の始まり以来あったが、ターム(術語、専門用語)としての「都市デザイン」は、1950年代後半以降から広まり始めた。都市・都市空間を対象とするデザインであり、システムとしての都市計画に対し、ⓐ都市の物的空間を総合的に形態化・組織化したり、ⓑ都市の個別的空間を固有のかけがえのない場所として構成する行為である。この都市デザインは、現在においては、当然に、環境デザインを目指すものとなり、都市の環境デザインとほぼ同義と言ってよい。
一方、シビックデザインという分野(ターム)がある。シビックは、「都市の、市の」という意味が第一義であるので、都市デザインであり、シビックデザインも都市の環境デザインの範疇に入る。ただし、シビックデザインの範囲は、それだけにとどまらない。シビックには、「市民としての、市民にふさわしい」という意味もあるので、市民(~主体の、~のための、~参加の)デザインという側面がある。さらに、シビックの類義語にパブリックがあるので、パブリックデザイン(公共デザイン、オープンスペースなど公共空間デザイン、公共物デザイン…)である。そして、civilもまた類義語であって、civil engineering(土木工学)との関連から、「土木デザイン」[5]であると言える。
単に都市空間についてのデザインだけでなく、道路、水辺、広場、公園など地域基盤となる個別的機能施設(公共事業である)について、地域性・公共性、地域環境との調和、美しさ[6]などに配慮してデザインすることが、都市の環境デザインとして加えられなければならない[7]。
前述のように、都市環境デザインは、都市環境のデザインという様相をもつ。
都市環境には、以下のように、多くの側面があって、そのそれぞれが都市環境デザインの対象となる。それぞれに課題があり、目標設定がなされ、デザインされる。
都市環境デザインは、「都市づくり」に関わる。この都市づくりは、「都市計画」と「まちづくり」から成ると考えられる。
都市計画法によれば、都市計画は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設(道路・公園等)の整備及び市街地開発事業に関する計画(Plan)であり、それを策定し、その実現を図ること(Planning)である[8]。
ところが、それだけでは、都市づくりとしては極めて不十分である。たとえば、都市における住民・市民を考慮すれば、身近な生活環境やコミュニティを良好な状態に保ち、育てるということをしなければならない。言ってみれば、都市計画によってつくられる枠組み(システム)に、人間的な内実に満ちた生活環境・生活空間を付加・充填するという作業・行為が必要である。これがいわゆる「まちづくり」という領域である。
地区デザイン・コミュニティデザイン、景観まちづくり、環境にやさしいまちづくり、安心で安全なまちづくり、高齢者が住みよいまちづくり、子どもの居場所づくり、教育・文化のまちづくり等々、課題は多い。
都市環境デザインの仕事は多岐にわたり、専門分野から言えば、都市計画、都市デザイン、建築、土木、ランドスケープデザイン、プロダクトデザイン、アートなどが関わる。都市環境デザイナーの役割も単にデザインにとどまらない。企画・プランニング、社会への提案、計画・デザインにおける住民参加の促進、計画・デザインの実現等々に携わる必要があり、その素養を身につけなければならない。
仕事場は、行政(国土交通省、地方自治体)、都市計画・デザイン事務所、土木コンサルタント、造園設計(ランドスケープデザイン)事務所、建築設計事務所、まちづくりコンサルタント、ゼネコン(総合請負業)、ディベロッパー、ハウスメーカーなど多彩である。まちづくりNPOなどに参加して、社会貢献することも期待される。