美しい景観、安全で住みよい街。そこに暮らすことで心が豊かになるような、ずっと暮らし続けたいと思えるような環境を実現するためのデザイン。
このコースでは、それぞれの風土にふさわしい都市デザイン、魅力あるまちづくり、より快適な生活のためのシビックデザイン(公共空間・インフラデザイン)、デジタルメディア情報システムに関する専門知識を学びます。
- 都市環境デザイン演習Ⅰ・Ⅱ
- 快適な街、安全な街、ずっと住み続けたくなる街…。それら様々な良い街の条件、またはそれらを実現するデザインを実習で習得します。
- 建築・環境デザイン及び計画演習
- 少人数アトリエ体制のもと、自ら問いを立て、問題解決のためのアイデアを発想します。建築・環境デザインおよび計画の技術を向上させる演習です。
国家資格(平成24年4月予定)
卒業と同時に目指したい資格
- 一級建築士特定科目の修得および卒業後2年以上の実務経験が必要です。
- 二級建築士特定科目の修得が必要です。
- 木造建築士特定科目の修得が必要です。
卒業と同時に資格取得
- 中学校教諭一種免許状
(美術) - 高等学校教諭一種免許状
(美術) - 高等学校教諭一種免許状
(工業) - 高等学校教諭一種免許状
(工芸)
※教職課程の所定科目単位の習得が必要です。
公的民間資格(平成24年4月予定)
在学中もしくは卒業後に目指したい資格
- 福祉住環境コーディネーター®
- CAD利用技術者試験
- 商業施設士
- インテリアプランナー
- 福祉施設士
- カラーコーディネーター®
めざす業界
- ランドスケープデザイナー
- まちづくりコーディネーター・プランナー
- 都市コンサルタント
- 不動産業
- ディベロッパー
- 公務員
就職先の例
- 鳳コンサルタント(株)環境デザイン研究所
- Royston Hanamoto Alley & Abey Landscape Architecture Planning Urban Design
- studio-L
- 株式会社 緑景
- 株式会社都市環境ランドスケープ
- 株式会社千代田コンサルタント
- ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
- 近畿技術コンサルタンツ株式会社
- 西松建設株式会社
- 斎久工業株式会社
- 株式会社IAO竹田設計
- 大東建託株式会社
- セキスイハイム近畿株式会社
- 大阪府住宅まちづくり部
- 向日市建設産業部都市計画課
- 交野市役所
- 京都市都市計画局都市景観部
建築・環境デザイン学科 榊原 和彦 教授
人がつくる都市
「創世記」に、初めに神は天と地を創造し、7日目までに天と地の万象と人をつくったとある。そして、アダムとイブの子カインが、町を建てたという。これを受ければ、「神が自然と人をつくり、人が都市をつくった」ということになろう。諸人は異なる言い方をしている[1][2][3]のだが、都市が人間の創造物であることを言っていることに変わりはない。
そして、『都市は生き物ではないが、それを創造した人間の特徴をいたるところに備えている』とシビル・モホリ=ナギ[4]は言う(写真1参照)。都市は、人と共にあり、人によってつくられ、育てられる。そういう都市づくりの一環の中に、都市環境デザインは位置づけられる。
(写真1)
日本とイタリアの歴史的町並み。それぞれの町並みの中に、それを創造した人間の特徴−言い換えれば「文化」−が如実に反映されている。
((a)メルカテルロ・スル・メタウロ
(イタリア、マルケ州の人口1500人ほどの小都市)
(b)伏見(京都市)の酒蔵のある町並
都市・環境・デザイン
都市環境デザインは、都市の環境デザインであり、同時に、都市環境のデザインである。前者から考えてみよう。
都市は、人が集まり、空間とか、文化とか、人間活動において特有の都市的特性を有する地域のことである。これを対象とするデザイン分野には、「都市デザイン(アーバンデザイン)」がある。実態としての都市デザインは、都市の始まり以来あったが、ターム(術語、専門用語)としての「都市デザイン」は、1950年代後半以降から広まり始めた。都市・都市空間を対象とするデザインであり、システムとしての都市計画に対し、ⓐ都市の物的空間を総合的に形態化・組織化したり、ⓑ都市の個別的空間を固有のかけがえのない場所として構成する行為である。この都市デザインは、現在においては、当然に、環境デザインを目指すものとなり、都市の環境デザインとほぼ同義と言ってよい。
一方、シビックデザインという分野(ターム)がある。シビックは、「都市の、市の」という意味が第一義であるので、都市デザインであり、シビックデザインも都市の環境デザインの範疇に入る。ただし、シビックデザインの範囲は、それだけにとどまらない。シビックには、「市民としての、市民にふさわしい」という意味もあるので、市民(~主体の、~のための、~参加の)デザインという側面がある。さらに、シビックの類義語にパブリックがあるので、パブリックデザイン(公共デザイン、オープンスペースなど公共空間デザイン、公共物デザイン…)である。そして、civilもまた類義語であって、civil engineering(土木工学)との関連から、「土木デザイン」[5]であると言える。
単に都市空間についてのデザインだけでなく、道路、水辺、広場、公園など地域基盤となる個別的機能施設(公共事業である)について、地域性・公共性、地域環境との調和、美しさ[6]などに配慮してデザインすることが、都市の環境デザインとして加えられなければならない[7]。
都市環境のデザインと課題
前述のように、都市環境デザインは、都市環境のデザインという様相をもつ。
都市環境には、以下のように、多くの側面があって、そのそれぞれが都市環境デザインの対象となる。それぞれに課題があり、目標設定がなされ、デザインされる。
- 都市の魅力には、高質な空間が欠かせないが、それを与えるのが歴史的環境なり文化的環境であり、自然(的)環境である。
- 環境の価値的・効用的属性とそれに対応する環境とを挙げると、「美:美的環境・景観」「快適さ:快適環境」「機能性・利便性:利便環境」「生存可能性(安全・安心、保健性):生存環境」などである。総合して捉えると「生活環境」である。
- とくに、「景観」については、2004年「景観緑三法」が公布され、景観づくりは、都市環境デザインの主要課題となった。
- 都市における生活環境を機能の別や環境要因に基づいて区分すると、居住環境、商業環境、余暇・娯楽環境、生産環境、教育環境などがあり、それぞれがデザイン対象となる。
- 環境を関係する主体や影響の種別によって区分すれば、地球環境、自然環境、生息環境(主体:生物)、生活環境(主体:人間)、行動環境などがあるが、これらのそれぞれを都市環境との関わりにおいてデザインされる。
都市環境デザインとまちづくり
都市環境デザインは、「都市づくり」に関わる。この都市づくりは、「都市計画」と「まちづくり」から成ると考えられる。
都市計画法によれば、都市計画は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設(道路・公園等)の整備及び市街地開発事業に関する計画(Plan)であり、それを策定し、その実現を図ること(Planning)である[8]。
ところが、それだけでは、都市づくりとしては極めて不十分である。たとえば、都市における住民・市民を考慮すれば、身近な生活環境やコミュニティを良好な状態に保ち、育てるということをしなければならない。言ってみれば、都市計画によってつくられる枠組み(システム)に、人間的な内実に満ちた生活環境・生活空間を付加・充填するという作業・行為が必要である。これがいわゆる「まちづくり」という領域である。
地区デザイン・コミュニティデザイン、景観まちづくり、環境にやさしいまちづくり、安心で安全なまちづくり、高齢者が住みよいまちづくり、子どもの居場所づくり、教育・文化のまちづくり等々、課題は多い。
都市環境デザイナーの役割とその仕事[9]
都市環境デザインの仕事は多岐にわたり、専門分野から言えば、都市計画、都市デザイン、建築、土木、ランドスケープデザイン、プロダクトデザイン、アートなどが関わる。都市環境デザイナーの役割も単にデザインにとどまらない。企画・プランニング、社会への提案、計画・デザインにおける住民参加の促進、計画・デザインの実現等々に携わる必要があり、その素養を身につけなければならない。
仕事場は、行政(国土交通省、地方自治体)、都市計画・デザイン事務所、土木コンサルタント、造園設計(ランドスケープデザイン)事務所、建築設計事務所、まちづくりコンサルタント、ゼネコン(総合請負業)、ディベロッパー、ハウスメーカーなど多彩である。まちづくりNPOなどに参加して、社会貢献することも期待される。
- 日端(2008)は、『都市計画の世界史』(講談社現代新書1932)の冒頭において、『「自然は神が創り、都市は人間が造った」という西洋のことわざがある。人間は生命や自然は創ることはできないが、その叡智を絞って都市を造り、人類の文明と文化の歴史を育んできた』と述べる。
- 井口(1994)は、『自然の「土木」』(都市環境デザイン会議・関西ブロック「土木デザイン・キーワード集」)の稿で、『「神が田園をつくり、人が都市をつくった」とウィリアム・クーパー(1731−1800)の詩にはある』と述べる。なお、Cowperの原文は、"God made the country, and man made the town"である。
- 「京都市情報館」は、その設置の目的の中で、『「神は田園をつくり、人は都市をつくった」と、神の業(わざ)になぞらえられるほど、都市は人類の偉大な創造物であり、文明の起源とともに古い。都市は人間の生活の場であり、自然との関わりを含む人間の営みそのものである。そこには人間が自然や他の人間と共に生きるための知恵が累積されている。そこには、多くの人々を引き寄せる様々な魅力がある』と述べる(http://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/page/0000004008.html)
- シビル・モホリ=ナギ(1975)、服部岑生訳『都市と人間の歴史』鹿島出版会、p.7。
- 建設省(現国土交通省)主導の下に設置されたシビックデザイン導入委員会が、1991年に「シビックデザイン導入推進のための提言」を出したが、ここで「シビックデザイン」は、『地域の歴史・文化と生態系に配慮した、使いやすく美しい公共土木施設の計画・設計』と定義されている。
- 榊原和彦(2004)『公共事業の良好な景観について』「環境技術」Vol.33、No8。
- 榊原和彦(2001)『土木デザインと都市環境−インフラストラクチュアからインフラ・アーキテクチュアへ』(参考文献9)のpp.86~100)
- 都市計画法第4条の(定義)において『この法律において「都市計画」とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画で、次章の規定に従い定められたものをいう』とある。
- 鳴海+都市環境デザイン会議関西ブロック(2001)『都市環境デザインの仕事』学芸出版社。特に、pp.7~22、鳴海『序「都市環境デザイン」とは』